企業内保育所や院内保育所では、ただ子どもを預かるだけでなく、社会性を育む発達支援を提供します。発達支援を行うためには、プログラムの作成だけでなく、日々子どもと関わる保育スタッフの教育が必要です。
本記事では、企業内保育所や院内保育所に必要な発達支援の内容について解説します。実際の事例なども紹介しており、本記事を読めば、発達支援について網羅的に知識を得られる内容になっています。保育所の開設を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
なお、保育所の開設にあたって、「どのような発達支援を行えばよいかわからない」「何から手をつければよいかわからない」という方は、ぜひタスク・フォースにご相談ください。豊富な保育所運営の実績から、貴社に合ったプログラムの作成やスタッフへの研修をサポートしています。
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企業内保育所・院内保育所の発達支援とは
企業内保育所・院内保育所の発達支援とは、保育所で子どもの健やかな発達(言語・運動・社会性など)を促すための支援活動です。単に子どもを預かるだけでなく、「心身両面での健やかな発達」を目指す保育方針のもと、一人ひとりの発達段階に応じた関わりを行います。
例えば、言葉遣いや体の動かし方、友達との関係づくり、自主性など、将来の土台となる力を育むのが目的です。実際に、発達支援カリキュラムを持つ企業内保育所を導入したところ、子育て世代の若い社員の増加につながったというケースもあります。
企業内保育所・院内保育所の発達支援は、子どもを預けるだけではなく、成長を支え、仕事と育児の両立を支援する活動です。
企業内保育所・院内保育所の発達支援で行う内容
企業内保育所・院内保育所の発達支援で行う内容は、以下のとおりです。
それぞれについて詳しく解説します。
言語発達支援
言語発達支援では、絵本の読み聞かせや歌、日常的な語りかけによって言葉の発達を促します。例えば、朝の会やお昼寝前の読み聞かせの時間を設け、日常的に読み聞かせをすると、子どもたちは耳から言葉を覚えます。
また、読み聞かせによって子どもは物語の世界や登場人物の気持ちを疑似体験できるため、想像力や共感力を育てる上でとても有効です。物語に入り込んで集中力も身につくため、じっとしていられない子どもも最後まで話を聞く力を身に付けられます。
読み聞かせによって先生と子どものコミュニケーションが活発になり、信頼関係が築きやすくなるのも効果の一つです。子どもの成長を促し、社会生活を行う上で必須の、コミュニケーション能力向上も期待できます。
運動発達支援
運動発達支援では、粗大運動と微細運動の両面から子どもの運動能力を育むのが目的です。
粗大運動は全身を使った動きを指します。例えば、屋外遊びやリズム体操、サーキット遊びなどの走る・跳ぶ・踊るといった運動です。粗大運動では主に大きな筋肉を使うため、筋力やバランス感覚を養いたいときの活動に取り入れるのがおすすめです。また、粗大運動を通じて体の使い方を学ぶことで、日常生活の動作がスムーズになり運動能力全般の向上にもつながります。
微細運動とは、手先の細かい運動です。幼児の成長過程において微細運動は、物を掴む、指先で押す、つまむなどの動きの繰り返しで発達していきます。例えば、積み木、パズル、お絵かきなど指先を使う遊びを取り入れると、手先の器用さや目と手の協応動作の発達促進が可能です。
遊びを通じて、自分の身体を思い通りに動かす力や巧緻性を少しずつ伸ばしていくのが運動発達支援です。
社会性発達支援
社会性発達支援では、集団生活の中でスムーズな対人関係や適切に行動できる能力を養います。例えば、「順番を待つ」「ルールを守る」といった社会的ルールの学習には、おもちゃの貸し借りや簡単なゲームを行うのが効果的です。また、おままごとやごっこ遊びは役割やルールを設けて遊ぶため、自然と集団のなかでの協調性や道徳性が身に付きます。
ほかにも、子ども同士でおもちゃの取り合いや順番でけんかになった際は、すぐに止めるのではなく、少し様子を見るようにしましょう。けんかは自分の気持ちを相手に伝えたり、相手の気持ちに気づいたりする一つのきっかけとなるからです。その場が落ち着いたら、大人が子どもの気持ちを代弁したり、相手の気持ちに気づくよう促すと、感情の制御や表現を学ぶ良い機会となります。
企業内保育所・院内保育所の発達支援で必要なこと
企業内保育所・院内保育所の発達支援で必要なことは、以下の3つです。
- 適切な人員配置
- 保護者との連携
- 専門的なプログラムの作成
それぞれについて詳しく説明します。
適切な人員配置
発達支援を充実させるには、保育スタッフだけでなく、発達に関する専門知識を持つ人材の配置が重要です。例えば、発達支援コーディネーター、言語聴覚士、作業療法士などの専門職と連携すると、子どもの発達状況に応じた支援が可能になります。
子どもの成長は一人ひとり違うので、年齢、発達度に応じて、適切な支援が必要です。しかし、発達度の判断、個人に合わせた支援は一般の保育士だけでは限界があるため、専門家の協力が求められます。
もちろん、専門職の人員のみが発達支援の知識を持っていれば良いというわけではありません。定期的な研修を実施し、スタッフ全員が発達支援の知識を深めると、より専門的な対応が可能になります。
保護者との連携
発達支援を効果的に行うためには、家庭との連携が必要不可欠です。家庭と保育所で連携がうまく取れていないと、できること、できないことが判断できず、子どもの発達支援を円滑に進められません。保護者と保育士が家庭や保育所での情報を共有し、子どもの成長に対し共通の認識を持って関わることで、子どもの発達を促しやすくなります。
例えば、連絡帳や送り迎えの際のコミュニケーションを活用し、子どもの変化や成長を共有するのが有効です。また、子どもの発達に不安を感じている保護者に対しては、相談の機会を設けたり、適切な支援方法をアドバイスするとよいでしょう。
専門的なプログラムの作成
子どもの成長は一人ひとり異なるので、効果的に子どもの発達を支援するには、年齢や個々の発達に合わせた専門的なプログラムが必要です。また、発達が気になる子どもに対しては、個別支援計画を作成し、専門機関と連携しながらサポートを行うとよいでしょう。
例えば、年齢ごとに以下のようにプログラムを組みます。
- 0歳児:愛着関係の安定や感覚遊び
- 2歳児:言葉の爆発的発達を受け止める語彙遊びなど主に言語発達を促す
- 4〜5歳児:就学に向けてグループ遊びなどで社会性や思考力を高める
年齢だけでなく、一人ひとりの発達具合に応じて柔軟なカリキュラムを作成することが大切です。
企業内保育所・院内保育所で発達支援を行う際の課題
企業内保育所・院内保育所で発達支援を行う際に、よくある課題は以下の2つです。
順番に解説します。
人手や専門性の不足
発達支援は専門的な知識が必要になるため、画一的に支援するのは難しいです。特に、小規模な企業内保育所では専門知識を持つ人材の確保が難しく、負担が保育スタッフに集中してしまいます。
研修や指導、物理的なサポートなど保育者を支援するシステムが確立されていないことも課題の一つです。専門性と経験値が求められる発達支援では、保育者個人への負担が大きくなります。また、常に最新の情報を入手しないといけないため、専門性が追い付かないことも多いです。
各自治体では保育士向けの発達支援研修(発達障害理解や個別支援計画の立て方等)を行ったり、先述の保育所等訪問支援の利用促進策を講じていたりするので、研修などで活用してみましょう。
設備や制度上の制約
設備や制度上の制約も、発達支援を行う上で大きな課題です。例えば、企業内保育園でも「医療ケア」が必要な子どもを受け入れたいときに、緊急時に対応できる設備がないと預かれません。
また、障害の有無にかかわらず、互いに尊重しあう共生社会を目指す上で、発達支援に対する体制や制度が確立されていないことも課題です。「児童発達支援ガイドライン」や「保育所保育指針」にもとづいた設備を急ぎ整備しなくてはなりません。
設備や制度上の制約を解決するには、補助金などを活用し、なるべく少ない資金で必要な物を整える工夫が必要です。
発達支援を行う主な専門職とその役割
発達支援を行う主な専門職は、以下のとおりです。
- 保育スタッフ
- 児童指導員・療育スタッフ
- 言語聴覚士
- その他の専門職
それぞれの役割について以下で詳しく説明します。
保育スタッフ
保育スタッフは、企業内保育所・院内保育所における発達支援の中心的な役割を担います。主な業務は子どもの生活の世話と保育プログラム実施です。子どもの発達の段階に応じた活動計画を作成し、日常の遊びや生活の中で言語・運動・社会性の発達をサポートします。
企業内保育所・院内保育所は保護者が近くで勤務していることがメリットです。緊急時の即時連絡や送迎時の密なコミュニケーションが可能なため、保育士は保護者の支援者としての役割も果たします。発達支援コーディネーターと呼ばれる、関係機関と連携して発達が不安な子どもの支援をする担当保育士を置いている場合もあります。
児童指導員・療育スタッフ
児童指導員・療育スタッフは個別支援計画に基づき、発達に不安のある子どもの年齢・能力に応じた発達支援を専門的に行う職種です。例えば、感覚統合療法やソーシャルスキルトレーニングを取り入れ、発達の不安な子どもが集団生活に適応できるよう専門的な支援を行います。
子どもの指導・育成計画の企画立案や生活環境の整備、事業所内の調整、親や学校・児童相談所との連絡調整業務なども担います。
言語聴覚士
言語聴覚士(ST)は、言語機能や聴覚に障害のある子どもを対象に指導や訓練を行うスタッフです。専門的な知識をもとに訓練や検査、助言、指導を行い発語の遅れや発音の問題、コミュニケーション能力の向上をサポートします。
例えば、語彙を増やすための対話訓練や発声練習を行い、遊びの中で言葉のやり取りを促します。具体的には、絵カードや文字カードを用いた発話訓練や読み書き訓練などです。
また、食事に困難のある子どもにはゼリーなどを使用したり、噛んで飲み込むために必要な器官の運動訓練など、食事環境の指導も行います。
その他の専門職
発達支援には、ほかにも以下のようなスタッフが関わっています。
- 作業療法士
- 理学療法士
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 看護師
作業療法士(OT)、理学療法士(PT)は身体的に支援をする職種で、臨床心理士、公認心理師は心理的なサポートをする職種です。看護師は、医療的なケアに加え、日常の健康管理や精神面・衛生面の管理などを行います。発達の特性に応じて、必要な専門職と協力することで、子ども一人ひとりに合わせた包括的な支援が可能です。
企業内保育所・院内保育所の発達支援事例
企業の特色を活かした発達支援の事例
こちらの保育施設では、「空、飛行機、世界」といった企業にちなんだワードをコンセプトに、子どもたちの感性を豊かにする環境を提供しています。
例えば、以下のような企業理念と連動したユニークな発達支援が行われています。
- 年少児の部屋:安心できる雰囲気の中で基本的な生活習慣を身につけさせる
- 年長児の部屋:世界地図や飛行機の模型に触れながら想像力を膨らませる
企業の特性や理念を活かした発達支援は、子どもにとっても新鮮で興味を引き出す効果があり、保護者にも好評です。
インクルーシブ保育を導入している事例
こちらの保育施設では、2015年からインクルーシブ保育を実践してきました。
※インクルーシブ保育:障害の有無に関わらずすべての子どもが共に育つ環境を提供する取り組み
現場では、保育士と専門スタッフが協力し、通常保育の中に個別の発達支援プログラムを組み込んでいます。例えば、朝の会の後に発達が気になる子向けのリハビリ運動や言語訓練を実施し、その後みんなと合流して保育を続けるといった内容です。
インクルーシブ保育により、発達に凸凹のある子も日常の中で社会性を育めるだけでなく、健常児にとっても多様性を学ぶ貴重な場となっています。
専門家監修のもと発達支援教室を設立した事例
ある施設では発達支援教室を開催し、「睡眠と生活リズムの調整」と「感覚・運動リズムの調整」を土台に据えたプログラムを実施しています。「発達障害の専門研究員」が一人ひとりの個性に応じた自信と意欲を育てる療育を提供しているのが特徴です。
例えば、さまざまな感覚が育成される特殊な遊具を設置して、遊びで落ち着きや集中力を引き出す試みや、保護者へ睡眠習慣の指導をプログラムの一環として行っています。
発達支援の充実した企業内保育所・院内保育所にするならタスク・フォースにお任せ
企業内・院内保育所の発達支援は、言語・運動・社会性の発達を促す取り組みです。発達支援を充実させるには、専門人材の配置や保護者との連携が不可欠です。企業理念と連動した支援事例もあり、効果的な発達支援の導入が子育て支援と企業の人材確保につながります。
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