企業内保育所や院内保育所では、子どもたちの健康的な成長を促すために、「食育」が重要な役割を果たします。特に、働く保護者が安心して子どもを預けられる環境を整えるためには、栄養バランスの取れた給食の提供が欠かせません。
本記事では、企業内保育所・院内保育所で行う食育の目的や義務、一般的な保育所との違いについて詳しく解説します。これから企業内保育所・院内保育所を開設しようと考えている方や、すでに運営している方の参考になる内容となっているので、ぜひ最後までご覧ください。
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企業内保育所・院内保育所で食育を行う目的
企業内保育所における食育は、一般の保育園と同様「食」について広義に学びます。厚生労働省が掲げているように、以下のような子ども像への成長を目指すのが目的です。
- お腹がすくリズムのもてる子ども
- 食べたいもの、好きなものが増える子ども
- 一緒に食べたい人がいる子ども
- 食事づくり、準備にかかわる子ども
- 食べものを話題にする子ども
子どもが「食」に対する興味関心を持ち、将来的に健康的な食生活を送れるようにするのが目的です。企業内保育所では、一般的な保育園よりもスペースや人員などが限られている中で、食育を提供することが求められます。
企業内保育所・院内保育所で食育を行う義務
企業内保育所や院内保育所を、「認可外保育所」として運営する場合は、必ずしも給食を提供する義務はありません。
ただし、保育所として「食育」を行う義務はあるため、単なる栄養補給だけでなく、食育の一環として、子どもたちに食の大切さを教える役割が求められます。実際、こども家庭庁が公表している「保育所保育指針解説」では、以下のような指針が定められています。
子どもが自らの感覚や体験を通して、自然の恵みとしての食材や食の循環・環境への意識、調理する人への感謝の気持ちが育つように、子どもと調理員等との関わりや、調理室など食に関わる保育環境に配慮すること。 |
引用:こども家庭庁「保育所保育指針解説」
栄養バランスの取れた食事を提供し、食材の選び方や調理方法を学ぶ機会を設ける必要があります。また、食事を通じて感謝の気持ちや社会性を育むことも重要です。
企業内保育所・院内保育所と一般保育所の食育の違い
企業内保育所と一般保育所で行われる食育の要件に、大きな違いはありません。
提供方法に違いがあり、一般は自園調理か委託なのに対し、企業内保育所は社食や病院食の提供も可能になっています。
また、企業内保育所の場合は、企業の文化や方針に合わせた内容が多く、従業員のライフスタイルに寄り添ったプログラムが組まれるのが一般的です。
企業内保育所・院内保育所が食育で給食を提供するための要件
ここでは、企業内保育所・院内保育所で、給食を提供するための以下の要件について解説します。
順番に解説します。
献立に関する法的要件
企業内保育所や院内保育所を「認可外保育所」として運営する場合、「認可外保育施設指導監督基準」に沿った給食を提供します。
保育所における食事の提供ガイドラインや、保育所におけるアレルギー対応ガイドラインを参考に、栄養的な食事摂取基準や、乳幼児の好みに配慮した変化のある献立作成が必要です。具体的には、日本人の食事摂取基準(2010 年版)をもとに、適当なエネルギー及び栄養素の量(給与栄養量)を満たした献立でなければいけません。
施設の基準
認可外保育所として運営する場合、保育室以外に調理室とトイレの設置が基準で定められています。ただし、業者から外部搬入していたり、家庭からお弁当を持参したりしてもらう場合は、調理室を設置する必要はありません。
ただし、調理室がない場合(外部搬入の場合)でも、食品の加熱や保存、配膳に利用する調理設備(冷蔵庫、電子レンジなど)は必要です。また、調理室や食品を扱うエリアに乳幼児が立ち入らないよう、区画をする必要があります。
企業内保育所・院内保育所でも活用できる食育の事例
ここでは、「社会福祉法人 日本保育協会」が公表している資料をもとに、企業内保育所や院内保育所でも活用できる食育の事例を紹介します。
- 「野菜を育てること、食材を得ること」を学ぶ食育
- 保育所外での交流を利用した食育
順番に見ていきましょう。
「野菜を育てること、食材を得ること」を学ぶ食育
東京都にある「船堀中央保育園」では、従来の食育が「食べること」に偏り、「食を営む力」の意味が曖昧になっていることを課題として捉えていました。食育イベントの計画作りでも、園内で短時間かつ簡単に行えるクッキングなどに偏ってしまっていたそうです。
そこで、「植える」ことを重視し、食材を得るプロセスを含めた「植育」を提唱。食育活動を「植育」として見直し、「植える」こととして、食育のあり方を見直しました。
実際に行った食育内容は以下のとおりです。
食育内容 | 詳細 |
野菜博士のワークショップ | ・アスパラガスをテーマに、子どもたちが野菜に興味を持てるよう劇形式で実施・野菜博士がアスパラガスの成長過程を忘れるという設定で、子どもたちは「アスパラ体操」などを通じて学ぶ・最後にホワイトアスパラガスとグリーンアスパラガスを食べ比べをする |
ミズナの水耕栽培 | ・ペットボトルを活用し、造形活動と栽培を組み合わせた食育・子どもたちが自らプランターを作り、ミズナの種を播き、成長を観察。 |
保育スタッフの知識や栄養士との連携に課題はあったものの、「食べること」だけに重きを置かれていた食育に、本来の意義を子どもたちに伝えられています。
保育所外での交流を利用した食育
山口県にある勝山保育園は、保護者と保育スタッフの間で、食育に対する意識の違いがあることを課題と捉え、連携を取るための取り組みを実施しました。
まず、朝食を欠食する家庭が20%、夕食を欠食する家庭が約4%あることが明らかになり、食事の重要性が十分に伝わっていませんでした。また、保育士の81.3%が園での食事の様子を伝えていると回答しましたが、保護者の69.7%しかそれを認識していなかったため、この食育への関心の低さや情報伝達の課題を解決するために、以下の取り組みを行っています。
食育内容 | 詳細 |
地域への働きかけ | ・「ふれあいデー」で、高齢者と子どもたちが一緒に芋掘りをし、収穫した食材を使って豚汁パーティーを開催・食事をして親子や高齢者との世代間交流を実施 |
保護者への働きかけ | ・「いただKID’S」という給食だよりを年4回発行し、園の食事内容や食育活動を紹介。・子育て支援センターで試食会を実施し、食事を通じて家庭での悩み相談の機会を提供 |
子どもへの働きかけ | ・「ランチタイムDJ」を導入し、給食時に食材の話やクイズを交えた放送を実施・楽しい雰囲気の中で食事の大切さを伝え、子どもたちが家でも話題にすることで、家庭内の食育にもつなげた |
園と家庭のコミュニケーションを深めることで、子どもたちの食への関心を高め、より良い食習慣の形成につなげられました。食育活動は、子どもだけでなく、家庭や地域と連携することでより効果的に機能します。
そのため、地域と家庭の支援を強化し、信頼関係をきづけると、より良い食育が実現できます。
企業内保育所・院内保育所で食育を実施するポイント
企業内保育所や院内保育所で食育を実施するポイントは、以下の3つです。
- 年間計画に沿って進める
- 栄養士と連携して行う
- 独自の食育にも取り組む
順番に解説します。
年間計画に沿って進める
企業内保育所での食育を効果的に運営するためには、年間計画に基づいて活動を進めることが重要です。年間計画には、季節ごとの食材の利用や行事食、食育イベントのスケジュールを組み入れます。
例えば、春には野菜の種まきや収穫体験を行い、夏には冷たい料理を楽しむイベントを企画するなどです。作って食べるだけでなく、実際に食べるものを育てる経験をすると、子どもたちが食に対して興味を持つきっかけを提供できます。
栄養士と連携して行う
企業内保育所での食育活動は、栄養士との連携が不可欠です。栄養士は、子どもたちの成長に必要な栄養素を考慮した献立作りや、食材の選定において専門的な知識を提供します。
栄養士が子どもたちと一緒に料理をする機会を設けることで、実践的な食育が実現し、子どもたちの食に対する興味を引き出しやすくなるでしょう。
独自の食育にも取り組む
企業内保育所では、独自の食育プログラムを開発することも重要です。例えば、地元の農家と連携し、農業体験を通じて食材の生産過程を学ぶプログラムを実施するなどがあげられます。
独自の魅力を伝えられると、企業内で入園する人の数を増やすためのアピールになるでしょう。
企業内保育所・院内保育所で食育を行う際の注意点
企業内保育所や院内保育所で食育を行う際の注意点は、以下の3つです。
- 安全性に配慮する
- 子どもたちの発達段階に応じた配慮をする
- 委託先は既定の会社に委託する
順番に解説します。
安全性に配慮する
企業内保育所での食育を行う際には、安全性を最優先に考えましょう。食材の選定から調理、提供に至るまで、衛生管理を徹底します。
アレルギーを持つ子どもに対しては、特別な配慮が必要です。献立にはアレルゲンの表示を行い、調理器具や食器の分け方にも注意を払いましょう。
保育所内のオペレーションだけでなく、事前に保護者へのヒアリングを徹底しておくと、重大な事故につながる可能性を軽減できます。
子どもたちの発達段階に応じた配慮をする
食育を行う際には、子どもたちの発達段階に応じた配慮が不可欠です。年齢や発達段階に応じて、食事の内容や形状を工夫し、食べやすさを考慮しましょう。
発達段階に応じた配慮の具体例は、以下のとおりです。
年齢 | 食育内容・注意点 |
0~1歳児 | 食べることに慣れていない時期なので、食材の形状や硬さに十分配慮する |
2~3歳児 | 自分で食べる意欲が出てくるため、スプーンやフォークの使い方を練習する |
4~5歳児 | ある程度の理解力がついてくるため、野菜の栽培や調理体験など、より実践的な食育活動を取り入れる |
特に、企業内保育所は異年齢保育になるケースが多いため、どのように対処するのか、規定を作っておきましょう。
委託先は既定の会社に委託する
企業内保育所での給食や食育活動を行う際には、委託先の選定が重要です。特に、「企業主導型保育事業」として運営していく場合は、厳しい要件を満たした会社に委託する必要があります。
「一般社団法人 全国企業主導型保育事業連合会」によると、委託会社が要件を満たせないために、助成金の支給が行えない事態があるとされています。助成金の有無に限らず、「食品衛生法を遵守しているか」「アレルギー対応が可能か」など、子どもたちの安全に配慮できる業者を選びましょう。
※2025年2月時点では、企業主導型保育事業の助成金受付は終了しています。
企業内保育所・院内保育所の食育に関してよくある質問
企業内保育所・院内保育所の食育に関して、よくある質問は以下のとおりです。
- 調理室は必ず設けなければいけない?
- 保育園の食育は誰がやるの?
- 保育園での食育の具体例は?
順番に解説します。
調理室は必ず設けなければいけない?
認可外保育所として運営していく場合は、必ずしも設置する必要はありません。ただし、「企業主導型保育事業」として運営していく場合は、利用定員が20人以上の場合、調理室を設けることが義務付けられています。
利用定員が19人以下の場合には、調理設備を設置すればよく、例えばコンロや冷蔵庫があれば基準を満たせます。
企業内保育所の食育は誰がやるの?
保育園における食育は、主に栄養士と保育スタッフが協力して行います。両者の連携が重要であり、定期的なミーティングや給食会議を通じて、コミュニケーションを図ることが推奨されます。
また、食育には保護者の協力も不可欠になるため、関係構築に努めましょう。
保育園での食育の具体例は?
保育園で行われる食育の具体例は以下のとおりです。
- 栽培活動
- クッキング保育
- 食育イベント
- 食事に関する話題提供
保育園では子どもたちが楽しく食育を学び、健全な食生活を身につけることを目指します。企業や病院独自のプログラムを組んだり、他の保育所の事例を参考にしたりして、魅力的な食育を提供しましょう。
企業内保育所・院内保育所での食育はタスク・フォースにおまかせ
企業内・院内保育所の食育は、子どもたちの健康的な成長と食への関心を育むことが目的です。給食提供には法的要件があり、安全性や発達段階への配慮が求められます。
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