共働き世帯やひとり親家庭が増加するなかで、従業員が子育てをしながら働ける環境を提供するために、企業内保育所を設置する企業が増えています。また、近年の少子化や人材不足の対策として、育児と仕事の両立に対する国や企業の支援も活発化しています。
このような状況のなか、「企業内保育所を開設したいけど、補助金を受けるにはどんな手続きが必要かわからない」とお悩みの方もいるのではないでしょうか?
そこで本記事では、企業内保育所が受けられる補助金を一覧で紹介していきます。申請の流れや受給の条件も解説しているので、これから企業内保育所の開設を検討している方はぜひ最後までご覧ください。
なお、企業内保育所の開設にあたって、補助金申請について相談したい方は、タスク・フォースに一度ご相談ください。設立35年を超えるタスク・フォースは、約120園の保育園を運営しており、豊富な実績があります。行政手続きや、補助金・助成金の申請などの開設時の手続きをサポートするだけでなく、開設後の運営実務も委託できる体制が整っているので、ぜひ以下のリンクから詳細を確認してみてください。
企業内保育で受け取れる補助金は事業形態ごとに違う
企業内保育は、事業形態によって以下の3つに分類され、それぞれ受け取れる補助金が異なります。
- 企業主導型保育事業
- 事業所内保育事業
- 認可外保育所
企業主導型保育事業は、企業が自社従業員のために事業所内や周辺施設等に保育所を設置する形態です。「認可外保育所」に分類されますが、認可保育所並みの助成金を受けられます。
事業所内保育事業も同じく、企業が事業所内に保育所を設置する形態ですが、大きな違いは、認可保育所である点です。自治体より認可されている施設のため、一定の基準を満たした保育サービスが保証されている強みがあります。
また、認可外保育所の場合は、各自治体ごとに補助金が提供されている場合があります。自治体によって補助金の金額や受給条件が異なるため、保育所を設置する市区町村のホームページや窓口で確認が必要です。
企業主導型保育事業の補助金
ここでは、企業主導型保育事業で受け取れる補助金の受給条件や内容(運営・整備)について解説します。
受給条件
企業主導型保育事業の補助金を受給するためには、職員の配置基準や保育所の設備基準などの要件を満たした上で、内閣府への申請が必要です。事業の規模や受け入れる子供の年齢によって条件が異なるため、一覧で紹介します。
職員配置基準
職員配置数 | ・乳児:おおむね3人につき1人・満1歳以上満3歳に満たない幼児:おおむね6人につき1人・満3歳以上満4歳に満たない児童:おおむね20人につき1人・満4歳以上の児童:おおむね30人につき1人※上記の区分に応じた数の合計+1以上の保育従事者を配置することが必要。(最低2人) |
職員資格 | ・保育従事者の半数以上は保育士資格を有していること・その他の保育従事者は、「子育て支援員研修」(地域保育コースのうち地域型保育)を修了していること(当該年度に受講を予定している者を含む) |
設備基準
0・1歳児 | 乳児室【3.3m²/人】ほふく室【3.3m²/人】 |
2歳児以上 | 保育室または遊戯室【1.98m²/人】 |
その他 | 医務室、調理室、便所(幼児用便座)、屋外遊技場【3.3㎡/人(2歳児以上)】 |
その他に、以下の条件を満たしている必要があります。
- 保育室を2階以上に設ける場合は、建築基準法に定められた防火上の必要な措置がされていること
- 認可外保育施設指導監督基準を遵守していること
※企業主導型保育事業の新規募集は2021年度で終了し、現在は新規募集を行なっていません。
整備費助成金
整備費助成金は、保育所を開設する際の工事費に対する助成金です。以下のどちらか低いほうの額が支給されます。
- 人口密度区分と定員区分の2つの区分の基準額を使用して 算出した基本単価
- 実際の工事費用の3/4
運営費助成金
運営費助成金は、企業主導型保育事業の運営に対して支払われる補助金です。以下の項目で構成されます。
- 月次報告対象月分の運営費(基本分)
- 月次報告対象月分の運営費(加算分)
- 施設利用給付費
- 利用者負担額減免臨時給付費(臨時措置)
運営費助成金は、園児1人あたりおおよそ10〜20万円が目安です。
事業所内保育事業の補助金
事業所内保育事業で受け取れる補助金と、受給条件や内容(運営・整備)について解説します。
受給条件
事業所内保育事業の補助金を受給するためには、職員の配置基準や保育所の設備基準などの要件を満たした上で、自治体の認可が必要です。事業の規模や受け入れる子供の年齢によって条件が異なるため、一覧で紹介します。
職員配置基準
利用定員 | 職員数 | 職員資格 |
20人以上 | ・0歳児:3人につき1人・1~2歳児:6人につき1人(最低2人) | 保育士 |
19人以下 | 利用定員20名以上の場合の職員数+1人 | 保育士 |
設備基準
利用定員 | |
20人以上 | 乳児室【1.65m²/人】、ほふく室【3.3m²/人】、保育室【1.98m²/人】、医務室、調理室、便所(幼児用便座)、屋外遊技場【3.3m²/人(2歳以上児)】の設置※成長に合わせて、乳児室とほふく室を使い分けるため、受入れの計画割合により必要面積をそれぞれ計算する |
19人以下 | 乳児室またはほふく室【3.3m²/人】保育室【1.98m²/人】、調理設備、゙便所(幼児用便座)、屋外遊技場【3.3m²/人】(2歳以上児)の設置 |
設置費
新築、増改築の場合の建築工事費、設備工事費、外構工事費、設計監理料、または購入の場合は購入費が助成の対象です。ただし、土地や建物の購入や賃借費用、整地費用、既存の建物の内・外装の解体費用、備品費は助成の対象とはならないので注意しましょう。
区分 | 助成率 | 助成限度額 |
大企業 | 1/3 | 1,500万円 |
中小企業 | 2/3 | 2,300万円 |
ただし、設置費の助成は一括ではなく、初年度に1/2が支給され、5年間継続して設置基準を満たす場合のみ、残額が支給されます。
増築費
既存の事業所内保育施設に対する増築も補助の対象ですが、5人以上の定員増となる増築や建て替えのみ対象です。
区分 | 助成率 | 助成限度額 |
大企業 | 1/3 | 増築:750万円建て替え:1,500万円 |
中小企業 | 1/2 | 増築:1,150万円建て替え:2,300万円 |
運営費
事業所内保育施設に配置された保育士などの職員の人件費も助成の対象となります。運営を別の企業に委託している場合でも、委託先の企業を通して保育士などの職員に支払った賃金が対象です。
区分 | 助成率 | 助成限度額 |
大企業 | 1/2 | 通常型:379万2千円~699万6千円時間延長型:505万2千円~951万6千円深夜延長型:533万2千円~1,014万6千円 |
中小企業 | 2/3 | 大企業と同様 |
病院内保育所(認可外保育所)の補助金
医療従事者向けに、病院内または病院周辺に設置された病院内保育所の補助金は、都道府県ごとに金額や要件が異なります。以下では、東京都を例に紹介します。
受給条件
職員などの委託を受けて、乳幼児に対し必要な保護・保育を提供する法人が対象です。
- 日本赤十字社
- 国民健康保険団体連合会及び国民健康保険組合
- 国家公務員共済組合及びその連合会
- 地方公務員等共済組合
- 私立学校教職員共済組合
- 農林漁業団体職員共済組合
- 健康保険組合及びその連合会
- 学校法人
- 医療法人
- 社会福祉法人
- 民法法人(民法第34条の規定により設立された法人)
- その他知事が認める者
整備費助成金
整備費助成金は、病院内保育所を新たに開設するための新築、増改築、改修に必要な工事費および工事請負費です。または、既存の病院内保育所の新築、増改築、回収に必要な工事費および工事請負費を対象としています。
支給額は、工事した基準面積(収容定員) ×5平方メートルに補助率0.66をかけた額です。ただし、収容定員は最大30人までという条件があります。また、建物の材質ごとの1平方メートルあたりの単価は、以下のとおりです。
1平方メートルあたりの単価
鉄筋コンクリート | 155,800円 |
ブロック | 136,400円 |
木造 | 155,800円 |
運営費助成金
運営助成金は、院内保育事業を行うために必要な保育士等の人件費(給料、賃金、諸手当)や委託料を対象とします。ただし、当該年度において、原則12ヶ月運営していることが条件。補助基準は以下の表により、区分されます。
補助基準
区分 | 保育児童数 | 保育士等職員数 | 保育時間 | 月額保育料 |
A型特例 | 1人以上 | 2人以上 | 8時間以上 | 10,000円以上 |
A型 | 4人以上 | 2人以上 | 8時間以上 |
B型 | 10人以上 | 4人以上 | 10時間以上 |
B型特例 | 30人以上 | 10人以上 | 10時間以上 |
支給額は、病院内保育施設の運営に係る設置者の負担能力指数による調整率をかけた額の合計額に補助率2/3をかけた額。計算式は以下の通りです。
基準額=[基本額{( A × 180,800円 × 12月 )- B }× C ]+ 加算額D
- 型別人員(A型特例:1人、A型:2人、B型:4人、B型特例:6人)
- 保育料収入相当額
- 負担能力指数による調整率
- 加算項目による加算額
加算項目は、以下の項目に当てはまる場合に加算されます。
- 24時間保育 23,410円 × 運営日数
- 病児等保育 187,560円 × 運営月数
- 緊急一時保育 20,720円 × 運営日数
- 児童保育 10,670円 × 運営日数
- 休日保育 11,630円 × 運営日数
企業内保育所が利用できるその他の補助金一覧
ここまで紹介した補助金以外に、企業内保育所を設置・運営するときに受給できる補助金は以下のとおりです。
設備向上に利用できる補助金
設備向上に利用できる補助金として、保育所等改修費等支援事業を紹介します。保育所等改修費等支援事業は以下の場合に利用可能です。
補助金の項目 | 詳細 |
賃貸物件による保育所等改修費等 | 賃貸物件を利用して保育所等を新設、移転など、利便性向上または質の向上のための改修にともない必要となる経費の一部を補助 |
小規模保育改修費等 | 賃貸物件を活用した小規模保育事業所を新設、移転など、利便性向上または質の向上のための改修に伴い必要な経費の一部を補助 |
認可化移行改修費等 | 事業所内保育事業の基準を満たすために必要な経費の一部を補助 |
子どもたちに提供する保育の質を向上させる投資に対して、補助金が適用されます。
運営向上を目指す補助金
運営を円滑にしたり、職員の負担を軽減させる際には、以下の補助金も利用可能です。
補助金の項目 | 詳細 |
IT導入補助金 | 各保育所の課題やニーズに合ったITツールを導入するための経費の一部を最大350万円補助 |
保育所等におけるICT化推進等事業 | 園児の登園管理、保護者との連絡などを「ICT化」するための費用を最大100万円補助 |
小規模事業者持続化補助金 | 保育の質を向上させるための新しい指針の導入、働き方改革に伴うスタッフの労働条件改善などに必要な経費を一部補助 |
「保育所」の分類に絞らず、中小企業などに対する補助金として探してみると、企業内保育所でも利用できるものが見つかります。
保育士のキャリアアップを目指す補助金
保育士の待遇を改善することによって、「キャリアアップ助成金」が受け取れます。キャリアアップ助成金は、事業主が非正規雇用労働者を正社員に転換、または直接雇用する際に、費用の一部を支給してもらえる制度です。
6ヵ月以上雇用している非正規雇用の保育士を正規雇用した場合、または派遣保育士を直接正規雇用した場合が対象。ただし、1年度で1事業所あたりに申請できる人数は20人が最大です。
保育スタッフの給料を上げたり、正社員の雇用数を増やしたりする際におすすめの補助金です。
地方自治体独自の補助金
企業内保育所に対する補助金には、地方自治体独自の補助金制度もあります。たとえば、福島県の「企業内保育所整備事業2型(単独型・共同利用型)」などです。
性被害防止のための設備を導入する際には、「保育所等における性被害防止対策に係る設備等支援事業」の補助金を利用するとよいでしょう。園内に防犯カメラ等を設置する場合、1施設あたり10万円が補助されます。
企業内保育所の補助金申請の流れと注意点
企業内保育所を新しく開設する際の補助金申請の流れは以下のとおりです。
| 事項 | 詳細 |
1 | 事業計画の策定 | 企業内保育所を開設するにあたり、開園時間や受け入れ可能人数など、事業計画を定める |
2 | 補助金の種類の確認 | 決定した事業計画に基づき、利用可能な補助金を確認 |
3 | 申請書類の準備 | 利用する補助金に必要な書類を準備 |
4 | 申請の提出 | 作成した書類を都道府県の労働局に提出 |
5 | 審査 | 都道府県で提出した申請の認定審査。 |
6 | 交付決定 | 審査に問題がなければ、補助金交付。 |
各補助金には受給条件があります。条件を満たしていない場合は、補助の対象外となるため注意しましょう。
また、補助金の申請には提出期限が厳しく定められています。期限を過ぎると申請が受理されない点にも、注意が必要です。
企業内保育と補助金に関するよくある質問
以下では、企業内保育と補助金に関するよくある質問に回答します。
- 企業内保育所が補助金を受け取る条件は?
- 補助金の申請はどこに行えばいい?
- 補助金申請に必要な書類は?
- 補助金がもらえない可能性はある?
- 補助金を活用する際の注意点は?
順番に説明していきます。
企業内保育所が補助金を受け取る条件は?
企業内保育所が補助金を受け取るためには、国が助成する制度や各自治体が独自に設けている補助金制度の条件を満たさなくてはなりません。申請する補助金や自治体によって条件は異なるため、ホームページや担当窓口でよく確認しておきましょう。
補助金の申請はどこに行えばいい?
補助金の申請は、主に国や地方自治体の関連機関で行います。経済産業省や厚生労働省の公式サイトで申請先を確認してください。また、各自治体の子育て支援課や福祉課などでも、地域に特化した補助金の情報が提供されています。
補助金申請に必要な書類は?
補助金申請には、一般的には以下の書類が必要です。
- 応募申請書
- 事業計画書
- 見積書
- 法人の履歴事項全部証明書
そのほかにも、施設の見取り図や賃貸の場合は賃貸借契約書など、申請する補助金によって提出が必要な書類が規定されています。最新の情報を確認して漏れがないように準備してください。
補助金がもらえない可能性はある?
補助金は、申請しても必ずしも受け取れるわけではありません。申請内容が要件を満たしていない場合や、申請件数が多い場合など、自治体の予算の制約により支給されないことがあります。
補助金を活用する際の注意点は?
補助金を活用する際は、いくつか注意が必要です。まず、公募期間が短いため、早めに申請準備を進めるのが重要です。
また、申請書類は正確かつ詳細に記入し、不備がないように注意しましょう。補助金の条件や要件は年度ごとに変更されることがあるため、最新の情報を確認してください。
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