【病院紹介】
一般社団法人徳洲会
https://www.tokushukai.or.jp/

1973年の創設以来、「生命だけは平等だ」の理念のもと、全国に80を超える病院をはじめ、クリニックや介護老人保健施設など300以上の施設を展開する日本最大級の医療グループの徳洲会様を取材しました。
看護本部長の八木沼正子様に、グループ全体における院内保育園の役割や、直営・他社委託における課題感、そしてタスク・フォースとともに取り組む「現場に寄り添う保育環境づくり」について伺いました。
コスト削減をきっかけに委託を検討しながらも、最終的に重視されたのは『保育の質』でした。

はじめに:ご所属と担当業務について

──まずは、ご所属や普段のご担当業務について教えてください。

一般社団法人徳洲会で看護本部長を務めております。グループ内の病院・介護施設等を含め、約17,000名の看護師、約7,000名の看護補助者や介護福祉士などの統括をしております。

人材の採用や教育はもちろんですが、業務が円滑にできてしっかりと経営をするという部分を含めて支援するのが私の役割です。本部として、現場で起きた問題に対応し、改善策を全体に共有・横展開できるように取り組んでいます。

院内保育は、中堅看護師の離職を防ぎ、復職を支える“経営インフラ”

── 徳洲会グループにおいて、院内保育園は看護師の採用・定着や病院経営にどのような役割を果たしていますか?

これだけの少子超高齢社会の中で看護職を採用・定着させるために、福利厚生としての保育所は非常に重要な位置にあります。

特に、結婚・妊娠・出産・育児を迎える時期は、看護師として経験を積み、スキルも成熟した「中堅」の時期です。現場で本当に頼りになる人たちが、出産などを機に退職してしまうのは病院にとって大きな痛手ですから、辞めずに働き続けられる環境をつくらなければいけません。

質の高い院内保育園が安定して稼働していることは、子育て世代のナースが「ここなら安心して復職できる」「この病院で働きたい」と思える強力な福利厚生になります。中堅ナースの離職を防ぎ、スムーズに復職・採用ができる環境を整えることは、病院の持続可能な運営と経営基盤を支える上で、欠かせない必須条件だと実感しています。

夜間保育は、子育て中の看護師だけでなく“チーム全体”を支える

── 院内保育園の存在は、周囲の看護師スタッフの働き方にも影響を与えるのでしょうか?

はい。実は「現場全体の負担を分散する」という非常に重要な役割も担っています。
夜勤のシフト調整は現場の大きな課題ですが、夜間保育がないと勤務できるメンバーが限られ、どうしても負担が一部に集中してしまいがちです。

24時間対応の保育園があることで、「月1〜2回でも夜勤に入ってチームを支えたい」という子育て中の看護師の想いが叶えられます。夜勤可能な人材が増えることで、特定のスタッフに勤務負担が集中することを防ぐ役割もあります。夜間保育の存在は、子育て中のナース自身を支えるだけでなく、周りのスタッフにとっても負担が軽減され、お互いを思いやりながら働ける温かい職場環境をつくることへ繋がっています。

コスト削減から検討が始まり、最終的な決め手は『保育の質』

── 様々な運営会社がある中で、タスク・フォースを推進いただいている理由や強みは何でしょうか?

自前で保育士の雇用や採用の募集費を抱えるより、委託にすることでコスト削減になるという現実的なメリットもあります。しかし、一番の理由はそこだけではなく、「保育の質」にすごく共感して導入を決めている点です。

お母さんたちは「本当は自分が育てなきゃいけない」という葛藤や罪悪感を持っていたりするので、保育園に対して「質」をすごく求めます。単に預かるだけではなく、子どもの生活や成長まで考えた保育が行われていることが、保護者の安心につながっています。

切り替え後、『以前より良くなった』という声

特に、病児・病後児保育の実施については、子育て中の看護師から大きな安心感が報告されています。

また、ある病院の看護部長からは「以前の体制とは安全面で異なり、事故報告がほとんど入ってこない。お母さんたちも安心して子どもを預けられている」という報告も届いています。さらに、保護者向けアプリの導入によって日々の連絡や情報共有がスムーズという声も上がっています。

オンラインで保育士さんたちの勉強会や情報交換をされているのも素晴らしいですね。

今後の展望とメッセージ

── グループとして、今後の院内保育園の活用や、タスク・フォース様への期待についてお聞かせください。

現場の環境や規模は病院ごとに異なりますので、それぞれの病院のニーズに合わせて柔軟に保育環境を充実させていきたいです。

また、タスク・フォースさんには、委託前の環境の引き継ぎだけでなく、「もっとこういうサービスやプログラムを入れたら、お母さんたちが働きやすくなるのでは」という新しいご提案をどんどんしていただき、一緒により良い保育園をつくっていければ嬉しいですね。
委託前の運営をそのまま引き継ぐのではなく、現場ニーズをもとにサービスを進化させていくパートナーとして期待しています。

── 最後に、保育園運営や看護師の確保・定着に悩んでいる全国の病院様へメッセージをお願いします。

看護師が仕事も私生活も充実させて働き続けられるようにするためには、何より保育体制を充実させることが一番です。

開設して、ただ預かるだけではダメなんです。看護師(お母さん)たちの生活スタイルやニーズは一人ひとり違います。「ルールだからこうしなさい、我慢しなさい」と壁をつくるのではなく、現場の悩みや多様なニーズを汲み取り、夜勤明け保育や勉強時の預かりなど、新しい保育サービスの仕方を柔軟に創造していくことが必要です。
院内保育は、ただ子どもを預かる場所ではなく、働き続けたい人を支える仕組み。そのためには、一人ひとりの働き方に合わせて保育サービスそのものを進化させていくことが大切だと思います。